先日、台湾の携帯電話メーカー HTC社の新製品発表会の取材で、ロンドンを訪れた。ここで発表されたHTC「Desire HD」と「Desire Z」の詳報は、姉妹誌のITmediaでレポートしたとおりだが、今回のロンドン出張でもう1つ、今後のモバイルビジネスで大きな可能性を感じたものがある。それが海外でもケータイ/スマートフォンのパケット料金が定額になる「海外パケ
ット定額制」の存在だ。
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海外パケット定額制は、ソフトバンクモバイルが今年7月21日から「海外パケットし放題」として業界に先駆けて導入。それに追随して、最大手のNTTドコモも9月1日から「海外パケ?ホーダイ」を提供開始した。業界2位のKDDI(au)も2011年3月から「海外ダブル定額」を提供する予
定だ。
こうした動きによって、海外でのメールやWebの利用がぐっと身近になったのは間違いない。海外パケット定額制にはどのようなインパクトがあるのか。筆者の体験も交えながら考えたい。
●“当面は”1日1480円で使い放題
本題に入る前に、ソフトバンクモバイルが始めた「海外パケットし放題」について改めて確認しておこう。 アスタリア RMT
このサービスはTwitter上でソフトバンクモバイル 代表取締役社長の孫正義氏がユーザーの求めに応じて導入を表明したもので、海外43の国?地域で、メールやWeb閲覧などパケット通信が定額制になるというものだ。定額制の上限料金は1日1980円(動画など利用時は2980円の予定)だが、2011年6月30日まではキャンペーン期間として1日1480円で利用できる FNO RMT
。国内での定額制サービスに比べれば割高に見えるが、これまで海外でのパケット通信は上限なしの従量制で単価が高く、数万円~数十万円の請求が発生することも多々あった。それを思えば、1日1480円で使い放題というのは破格の安さだ。なにより定額制の安心感がある。
一方、NTTドコモが開始した「海外パケ?ホーダイ」は、ソフトバンクモバイルを強 ASTARIA RMT
く意識したものになっている。上限料金は1日1980円(20万パケットまで。それ以上は2980円が上限)だが、2011年3月31日までは1日1480円で利用できる。なお、対象となる国?地域は26カ所と、先行するソフトバンクモバイルよりも少ない。
筆者は今回、ソフトバンクモバイルの「iPhone 4」を片手にロンドンに渡り、海外パケットし放題を試した。といって
も、特別な契約が必要なわけではない。ヒースロー空港で飛行機を降りたら、iPhoneの電源をONにするだけ。現地のキャリア(この場合はVodafon UK)の電波を掴むと、自動的に海外パケットし放題についてのSMSが送られてくる。あとはiPhoneの[設定]?[キャリア]で、海外パケットし放題キャリアの対象キャリア以外を使わないように設定し、[設定]?[一般]?
[ネットワーク]から「データローミング」の項目を[オン]にすればいい。
データローミングの設定をONにするとパケット通信が始まり、いつもどおりのiPhoneとしてメールやWeb閲覧ができるようになるが、ここで注意したいのが、パケットし放題が「1日1480円」の日割り計算である点だ。海外では時差があるため、この“1日”は日本時間の0時?23時59分
まででカウントされる。現地時間で日中でも、日本時間が夜の11時くらいだったりすると、わずか1時間ほどの利用でも1日分の利用料を取られてしまうのだ。飛行機を降りてメールチェックしたい気持ちをまずは抑えて、日本との時差を考えてから、いつデータローミングを始めるかを考えた方がいいだろう。
●マップ&ナビサービスが大活躍
今回
のロンドン出張では時差調整日が1日あったため、半日ほどロンドン市内を観光する時間があった。といっても、以前ロンドンで開催されたITS世界会議に参加した際に一通りの名所は見ていたため、今回はiPhone片手に市内を散歩がてら視察することにした。
ここで役に立ったのが、iPhone標準搭載の「マップ」と、ナビタイムジャパンのiPhoneアプリ
「Journey Pro」だ。前者はGoogleマップを使った地図サービス、そして後者はロンドン市内の地下鉄(チューブ)に対応した乗り換え案内サービスである。
まず「マップ」だが、こちらは日本で使うのと同様に日本語で地図が表示されており、GPSで現在地を表示したり、電子コンパスで自分が向いている方向を確認することができる。簡易的な歩行者ナビに
もなるため、紙の地図を片手に歩くよりもむしろ安心して街歩きが楽しめる。
一方、ナビタイムの「Journey Pro」は駅の始点と終点を指定すると、地下鉄の最適な乗り換えルートと発車時刻、所要時間などを教えてくれるというもの。駅の指定は文字による駅名入力のほか、路線図上から駅をタッチすることでもできる。ロンドンは東京に負けず劣らず地下鉄
が発達しており、ロンドン交通局が発行する交通ICカード「Oyster Card」を買えば、日本と同様に“タッチ&ゴー”で地下鉄に乗れる。Journey ProとOyster Cardを組み合わせれば、安価かつ気軽にロンドン市街を移動できるのだ。ロンドン名物といえばダブルデッカー(2階建てバス)と独自デザインのロンドンタクシーだが、地下鉄による散策もとても便利で楽しい。
●「海外でTwitter」の新しい面白さ
地図?ナビゲーションや地下鉄乗り換え案内以外では、「Twitter」が料金の心配なく利用できたのも市街観光を楽しむ上で役立った。筆者は街を歩きながら、写真やコメントをたくさん投稿(ツィート)したのだが、そうすると日本にいるフォロワーから多くのコメントがあった。この時差と距離を超えてのコミュ
ニケーションは予想以上に楽しく、海外旅行の新たな楽しみ方になるのではないかと感じた。旅行代理店が「個人旅行」と「SNS」や「ブログ」「メール」など、モバイルインターネットのコミュニケーションやコミュニティサービスを組み合わせた新たな旅行商品を開発したら、意外とウケるのではないかと思う。
●海外パケット定額制の普及で、海外旅行向
けコンテンツが注目?
これまで従量制だったパケット料金が定額制になる。これはコンテンツやアプリ利用の“足かせ”がなくなることであり、様々なサービスやビジネスの可能性を広げる。
特に昨今はiPhoneやスマートフォンなど海外でも高度なサービスが利用できる端末が増えている。今回紹介した地図?ナビゲーションや乗り換え案内といった
実用系だけでなく、日本で流行している「位置ゲー (位置情報を用いたゲーム)」などエンタテイメント系の海外旅行向けアプリの登場も考えられるだろう。海外パケット定額制の登場は、モバイルコンテンツ/サービス分野において、新たな市場創出効果も期待できそうだ。
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引用元:RMT